民宿に戻って部屋に落ち着いたところで、「少しは落ち着いたか?」と拓巳が口を開いた
その時やっと、拓巳が陽歌の気持ちを鎮める為に、わざと少し時間をおいたのだと気付いた。
民宿まで歩く事で冷静さを取り戻し、落ち着いて話せるようにと配慮してくれたのだ。
陽歌が落ち着いたのを見計らって、拓巳は再び話を進めた。
「さっきの話だけどさ、お前が自分を責めるのはおかしいと思うぞ。伯母さんも言ってたじゃないか。術後のお前は精神的に参ってたって…。そんな不安定なお前が約束を覚えている事のほうが難しかったんじゃないか?
お前が自分を責めることはないと思うぞ」
「あの時は、何日も高熱が続いてずっと変な夢を見ていたの」
「…また夢か。どんな夢だった?」
「私には姉妹がいて、大きな洋館に住んでいるの。まるで成長記録でも追うように赤ちゃんの私はどんどん大きくなっていくのよ」
「変な夢だな。それで?」
「夢の中での私は色んな経験をしていくの。苦しいことや哀しい事も沢山あったけれど、それでもとても満たされていて幸せだった気がする。目が覚めたときは、まるで何年も大人になったようだったわ。だけどそのせいで、暫くは夢と現実の区別がつかなくて、時々おかしな事を言ったりしたりしたそうよ」



