「私ったら酷いのよ。茜さんが毎晩のように夢を見せたのは、私を洗脳して晃先生を好きになるように仕向けたんじゃないかと思ったの。
私の体を乗っ取って晃先生の元へ帰ろうとしているんじゃないかとさえ思っていたのよ。
茜さんがどれほど私を大切にしてくれていたかも忘れていたくせに…。どうしようもないくらい酷い奴だよね」
自らの言葉が自身を傷つけ、心が血を噴き出した。
「晃先生が好きなの。どうしようもないくらい好きなの。10年間夢に見続けてずっとずっと好きだったの。それなのにこの想いは私のものじゃない。茜さんのものなの。私がどんなに想っても叶わないの。茜さんには叶わないの」
「落ち着けよ。俺どうしても分からない事があるんだけど」
「…なに?」
「あのさ。いや…一旦帰ろう。風が冷たくなってきた」
拓巳は陽歌の腕をとり、夜風から庇うように肩を抱いた。
暗闇でも拓巳の足取りはしっかりしていて、心が弱くなっていた陽歌には心強かった。
拓巳の手がいつもより大きく、温かく感じた…。



