「拓巳、私って最低、最低だわ」
全てを思い出した陽歌は、自分の中の毒を吐き捨てるように、忌々しげに言った。
「みんなに護られていたのに、それに気付かず悲劇のヒロインみたいな顔をしていたんだわ。茜さんがどんなに私を思ってくれていたかも知らないで、大事な約束をからかっていると勝手に勘違いして、あっさり忘れてしまったなんて…。なんて馬鹿なの」
情けなさに怒りがこみ上げ、全身がぶるぶると震えた。
手にした便箋が震えてカサカサと乾いた音をたてた。
「茜さんの血の滲む様な心の叫びに気付きもしないで、10年以上も待たせた挙句、約束だけじゃなく、彼女の名前すら忘れていたのよ。記憶の片隅に仲良くしてもらった妊婦さんくらいにしか残ってなかった。私、自分が許せない…」
「陽歌、落ち着けって」
「許せないよ…。私、なんて茜さんに謝ればいいの? どんな顔をして晃先生や暁君に茜さんの気持ちを伝えればいいのよ」
両手で自分を抱きしめるようにその場に蹲る。
込み上げてくる怒りは自分に向けられ、どんどん追い詰められていった。



