両親と暮らしていた頃に描いた絵が懐かしい。この中に何かあるかもしれないと期待に胸を膨らませた。

拓巳の機転に感謝しながら陽歌は手紙の束に手を伸ばした。

拓巳と伯母は陽歌の昔話に花を咲かせている。

たくさんの色あせた手紙は友達からのものが殆どで、多くが入院していた時に励ましで貰った物だった。

この手紙…目が見えない私に茜さんが読んでくれていたっけ。と、忘れていたことを懐かしく思い出した。

入院中の写真も数枚その中に含まれていて、懐かしさに頬が綻ぶ。写真の中に幸江が映っていたので拓巳に見せた。

拓巳は興味深そうに数枚の写真を取り上げ、パラパラと見流していく。

その中に一枚の写真を見止め、ピタリと手を止めた。

「陽歌、この妊婦さんって…?」

「……茜さん?」

ベッドで座る陽歌の横で優しく微笑む一人の女性。

漆黒の髪を肩より少し長く垂らし、黒目がちな大きな瞳は星降る夜を思わせる。

綺麗な二重に長い睫毛は、まるで人形のようだ。小ぶりの鼻と唇が彼女の印象を儚くしているように思えた。

大きなおなかをささえ、幸せそうに微笑んでいる。

「……なんて綺麗……なんて幸せそうなの?」

大切な物を慈しむかのような茜の優しい瞳は、カメラにではなく陽歌に向けられていた。