「でも彼女なら? 茜の記憶を持つ彼女なら、それが出来るかもしれないだろ?」

「解らないんだ。僕は、茜を彼女の中に求めているだけなのかもしれない。
昨日会ったばかりの彼女がこんなに気になるのは、茜と重ねているだけなのかもしれない。
そんな気持ちで、彼女に向き合えって言っても、今は無理だ」

晃の迷いが解らないでもない右京は、「明日また来る」と言い、部屋のドアを開けた。

晃に背中を向けたままその場で立ち止まるとポツリと呟いた。

「なぁ、晃。彼女に婚約者がいると知って動揺した時、心に浮かんだのは誰の顔だった?」

「え?」

「それがおまえの気持ちだよ。良く考えてみるんだな」

右京が残した言葉を噛み締め、晃は自分自身に問いかけた。


あの時僕の心に浮かんだのは……。