「……そうですか。あの、失礼ですがあなたは…?」
友人か、それとも恋人か。
相手が答えるのを待つ一瞬の沈黙が、とても長く感じられた。
『申し遅れました。私は梶 拓巳と申します。陽歌の同僚で…婚約者です』
晃は一瞬絶句し黙り込んだが、内心の動揺を悟られないよう、努めて平静を保とうとした。
「婚約者…そうですか。では彼女にお伝え下さい。
どうしても会って欲しい人がいますので、体調が良くなったら一度連絡をお願いします」
それだけをいうのが精一杯だった。
電話の向こうの男性は婚約者だと名のった。
昨日会ったばかりの女性の婚約者と電話で話した。
ただそれだけのことなのに、何故か心がかき乱される。
陽歌の体調が気になり、婚約者と名乗る男性を不快に感じ、二人が夜を共にしたという事実に動揺する。
気がつけば彼女の事ばかり考えている自分に晃は戸惑っていた。



