「…桜の花一つで機嫌が直るなんて単純だな」
「クスクス…そうかもね。その時ね「ほら、赤ちゃんも『おねえちゃん一緒に行こうよ』って言ってるよ」って、おなかに手をおいて赤ちゃんと会話をさせてくれたの。
私ね、茜さんのおなかに触るのが大好きだったのよ。温かい気持ちになって、彼女と一緒にいれば、どんどん自分が良い子になれる気がしたのよ」
「…やっぱお前ってすげー単純だ」
「純粋って言ってよね。その後病室に戻ったら熱があがっていて、凄く叱られたの。
微熱があったのにふらふらと寒い中庭に出た私が悪いんだけどね。
あの時も茜さんは迎えが来るまでずっと傍に付き添ってくれていて、お迎えが来た後も「帰らないで」って駄々をこねる私の為にご主人を30分以上待たせたらしいわ」
「単純な上に我が儘だったんだな?」
「もぉ、ヒドイ。子供の頃の話よ。……あ…っ…」
「ん、なんだ?」
「あ…うん…その時、茜さんが何か言ったんだわ。
そうよ…何か大切な事を言ったの」
「何て言ったんだ?」
「覚えていない。だけど、とても大事な事だった気がする。」
「例の約束ってやつか?」
「そうかもしれない。…その時、茜さんは大切な伝言を私に託した。
それなのに私はそのまま全てを忘れてしまったんだわ」



