1時間後、目覚めた拓巳と二人でルームサービスの朝食を取りながら、陽歌は拓巳に全てを話した。
信じてもらえるか分からなかったが拓巳には知る権利があると思ったからだ。
彼は馬鹿にしたりせず、神妙な顔つきで最後まで話を聞いてくれていた。
「陽歌が茜さんと最後に会ったのはいつだ?」
「んっと、私が熱を出した日。4月5日よ」
「よく日にちまで覚えてるな?」
「その日は小児病棟でお花見会があったからね。
私も行きたかったのに朝から微熱が出て先生に止められたの。
それが悔しくてベッドから抜け出して病院の中庭の桜の木の陰でこっそり一人でお花見をしたのよ」
「花見っておまえ、目が見えなかったんじゃ…?」
「見えなかったわよ。でも花びらを感じたり香りを楽しんだり、花の楽しみ方は色々あるのよ」
「まあそうだな。それで…?」
「そしたらね、私がいなくなったって病棟は大騒ぎだったらしいの。
だけどまだ桜の木には花びらも花の香りもなくて、折角来たのに怒られ損だなぁ…って、ガッカリしていたの。
その時茜さんが『ほら桜の花よ』って、どこから持ってきたのか、一本の桜の枝をくれてね。その花が凄くいい香りでなんだか拗ねているのがバカらしくなったのよ。
私の寂しさに一番に気付いてくれたのは、いつだって茜さんだったわ」



