「あの時は本当に心配をかけたね」
晃が申し訳なさそうに言うと、いつの間にかやって来た右京が、蒼の隣に座り
「ああ、本当に良い迷惑だったぜ」
と素気(すげ)無く言った。
「まったく、傘を持って行くように言ったのに、晃君は聞く耳持たずで飛び出して行っちゃうし、戻ってきた右京に傘を持たせたのに、渡さずに帰ってきちゃうし…」
蒼がチラッと睨むと、右京は困ったように視線を逸らし晃を見た。
「傘を渡せる状況じゃなかったってぇの。
あの酷い雨で神殿の中に二人がいるかどうかも見えないほどだったんだから…。
一応声は掛けたんだけど、雨音が酷くて聞こえなかったみたいだしさ」
正確には雨のカーテンの奥で愛し合っていた二人に、どうしても声を掛ける事ができず赤い顔で戻ってきたのだが、流石にそれを蒼に告げることは出来ず、右京は唇を尖らせて喉もとまで出かかった言葉を飲み込んだ。
瞬時に事情を悟った晃は「…まあ、あの時は雷が酷かったし…ね?」と意味ありげに苦笑した。
懐かしい昔の話は晃たちを過去の幸せな時間へ連れていってくれる。
写真の茜は幸せそうに白いドレスに身を包み微笑んでいた。
「…ところで、今日は茜のことで何かあったんでしょう? そろそろ話してくれない?」
やはり彼女は茜が絡むと異常に鋭いと晃は思った。
蒼曰く、茜からメッセージが届くようにピンと感じるものがあるのだそうだ。
やはり今回の事は、茜の意志が強く働いていることを感じずには要られなかった。
晃は気持ちを整理しながら、朝からの出来事を話し始めた。



