肩を軽くすくめ、「…右京じゃないけど、話してもいいかな?」と遠慮がちに問う。
茜は差し出していた手のひら落ちた水滴に視線を移し、空を仰ぎ雨粒を確認すると、ゆっくりと晃へ視線を戻して静かに頷いた。
晃は走ってきたであろう息を整えながら茜に手を伸ばした。
「茜、ゴメン…」
ポツリと降り出した最初の雨から庇う様に、晃は茜の肩を抱いた。
「晃…私は結婚が嫌なわけじゃないの」
「うん、解っているよ。僕が悪かった」
それ以上の言葉は要らないと、自然と重なる唇。
抱き合う二人を遠目に見つめる右京の心は複雑だった。
ただ、互いの手を取って生きていきたいという、ささやかな願い。
二人の時間がゆっくりと穏やかに、少しでも長く続くようにと願う事しか出来ない歯がゆさを、振り切るようにして右京はその場を立ち去った。
頬を滑る小さな水滴が落ちて、アスファルトに跡を残す。
それを合図のように鉛色の空は涙を流し始めた。



