「借り物のドレスじゃなくて、ひと針ひと針自分で心を込めて縫ったドレスで結婚式を挙げたかったの。
結婚そのものが決して叶うはずの無い夢だと思っていたから、本当に嬉しくて…
だからこそその日を大切にしたかったの」
哀しげに瞳をふせ、一筋の涙を流す。
相変わらずじれったい二人だと、右京はそっと茜の横顔を見つめた。
茜の気持ちは真っ直ぐだ。
右京が出逢ったころ、両親の死に責任を感じ立ち直れずにいた茜は、自らを責め死を望んでいた。
だが晃と出逢い、彼女の中で生きたいと望む気持ちが大きくなったおかげで、二度の大きな発作も乗り切ることができたのだ。
彼女にとって晃の存在は何よりも大きい。
それゆえ、晃以外は失うものは何も無いと、自分を傷つけてでも愛そうとする。
その姿は強く見えてあまりにも儚い。
晃は晃で茜しか見えていない。
人当たりが良いのにどこか冷めていて、決して他人に本音を見せなかった晃が、あれほど熱くなるなんて、ある意味これは喜ばしい事なのだろう。
これほどまでに晃が茜に溺れるなんて、誰も想像できなかった。
晃の焦る気持ちは解らないでもないが、盲目的な想いは時に茜をも傷つける。
出逢わせた事を後悔する前に助けが必要だろうと、境内の入り口に見え隠れする親友に目で合図を送った。



