部屋を飛び出した茜は、近所の神社の境内に来ていた。
ここは昔から茜の泣き場所だった。
発作を起こす度に、茜はここの神様にお願いに来た。
『どうかこの体を治してください』と。
玉砂利を踏みしめて拝殿に向かって歩き、ゆっくり階段を上がると賽銭箱の前に立った。
ポケットを探ってみるが何もない。
「賽銭が無かったら神様は願いを叶えてくれないかな?」
茜は寂しげに呟くと手を合わせた。
「…神様、私は晃に感謝する気持ちを忘れて我が儘になっていたのかもしれませんね。
晃の気持ちも解るのに、私は形に拘りすぎていたのかもしれません。
大切なのは形じゃないのに…」
結婚など望める体ではないとずっと思っていた。
晃に愛されただけでも十分すぎるほどだったはずなのに、いつの間に自分はこんなにも欲張りになったのだろう。
やはりここは自分が折れて式を挙げるのが一番良いのかもしれないと茜は思い始めていた。



