「もっと単純な夢よ。女の子なら誰でも一度は夢に見るわ」
『誰でも一度は』と言われ、それらしいものを思い浮かべてみる。
女の子のなりたい夢…看護師、アイドル、スチュワーデス、花屋、保母…?
色々な職業を片っ端から挙げては茜の好みそうな職業と符合していくが、なかなかピンと来るものはなかった。
そんな晃の様子を蒼は面白そうに観察していた。
先ほどまでの怒りは薄れ、悩む様子を面白がっているようにも見える。
次々に思いつく職業を全て蒼に却下され、ついにネタ切れとなった晃はギブアップと答えた。
「…どうして思いつかないかな?
目の前に答えがあるのに…。
解らない人なら結婚を許すつもりは無いわよ」
晃は蒼の真剣な視線を受け止めながらゆっくりとコーヒーを飲み干した。
柔らかな香りが鼻腔をくすぐり、優しい気持ちにさせてくれる。
このブレンドを作った茜の様子が目に浮かぶようだ。
毎朝このコーヒーの香りに揺り起こされ、彼女の声で目覚める。
眩しい光の中で交わす極上のキスはどれほど甘いだろう。
そこまで考えて、ふと思いついた。
「……女の子が誰でも一度は夢見るものって…もしかして『およめさん』とか?」
蒼は「まぁ、そんなところかな」と呟くと、「ならば何故?」と問う晃を目で制して続けた。



