「コーヒーを淹れる間に茜の夢が何か考えてみて」
と言うと、蒼は対面式のキッチンへと向かった。
サイフォンを取り出し準備するのを放心したまま見つめる。
蒼の言うとおり、いかに頭に血が昇っていようと、茜の命に関わる判断を誤ってしまったのだ。
伴侶であるならばまず最初にすべき行動を怠った自分を恥ずかしく思った。
しかも茜の事なら何でも知っているつもりだったのに、彼女の夢が何であるかを知らなかったのだ。
茜の気持ちを考えていると言いつつも、自分の事しか眼中に無かった事実を改めて付きつけられ、晃は自分の器の小ささを呪った。
茜に夢があるなど聞いたこともなく、考えたことも無かった。
それを話せなかったのは、自分を信頼できなかったからだろうか?
結婚を渋ったのは夢を奪われると思ったからだろうか?
様々な可能性と憶測が脳裏を過ぎる。
本当に愛しているのなら、彼女の夢を応援してやるのが男だろう。
必要なら手放してやる事も必要なのかもしれない。
理性はそう思っても、感情では割り切れそうも無かった。



