【長編】ホタルの住む森


蒼はクスクスと笑いながら、部屋の隅に詰まれたダンボールを指差した。

「茜の荷物なら昨夜のうちに右京に手伝ってもらって整理しておいたわ。
とりあえずこれからの季節に必要な夏物が中心だけど。
冬物は時期が来たらまた取りに来ればいいでしょ?」

これには茜も驚き「どういうこと?」と目をむいたが、蒼は平然として言った。

「もしもプロポーズを断って帰ってきたら高端家に強制送還するつもりで用意したのよ。
この家に茜の部屋はもうないわ。
あなたは今日から晃君と暮らすのよ」

「強制送還って…私の意志は無視?
右京~っ。あなたまで荷造りに協力することないじゃない。
そんなに私を追い出したいの?」

泣き真似をする茜に、右京は赤かった顔を青くしてオロオロした。

二人の行動が茜の幸せを心より望んでいるからこその、愛ある強硬手段である事は茜も理解している。

だが今朝からの晃の暴走に加え、蒼までもが追い立てるように荷物を用意していたことに、自分の意志を無視して物事が進んでいくことに苛立ちを感じていたのだ。