今日の出来事をどう説明しようかと考えながら、サイフォンでコーヒーを淹れる蒼の手元を見つめた。
対面式のキッチンの向こうから芳しい香りがリビングまで流れてくる。
茜にプロポーズした次の日にも、同じ光景を眺めた事を思い出し、懐かしさに頬が緩んだ。
「なぁに? 今日の晃君は変よ。
突然難しい顔をして訪ねてきて、ずっと黙りっぱなしだと思ったら、急に思い出し笑いなんかして…。
最近疲れてるんじゃない?」
「クスクス…違うよ。ちょっと思い出したんだ。
僕が『誕生日に結婚式を挙げる』って言った時の事」
「ああ…あの時の事?
もう随分前の事なのに、まるで昨日の事のようね。
あの時も突然、今日みたいな雷雨になって、あなた達ずぶ濡れになって帰ってきたじゃない。
茜が風邪を引くんじゃないかと随分心配させられたわ」
「アハハ…あの時の右京は可哀想だったね。
僕たちを置いて先に帰ってきたことを蒼に責められてたっけ。
仲直りをさせる為に気を遣ってくれたのに…」
晃は楽しそうに笑い、その時の事を振り返った。



