【長編】ホタルの住む森


「…亜里沙から聞いたのね?」

『ああ、教えてくれたよ。
で、心配だから追いかけろって言われた。
今から俺もそこへ行くから』

「はあ? 今からって、仕事はどうしたのよ?」

『今朝、亜里沙が勝手に半休申請を出したらしい。
知らないうちに午後から休みになってた』

亜里沙の信じられない行動に思わず呻き声が上がる。

亜里沙が拓巳に発破を掛けたことは明白だったが、ここまでするとは思わなかったのだ。

しかも仕事に関しては真面目な拓巳が、追いかけてくるなんて驚きだった。

『あいつ、お前が両親と住んでた土地で色々思い出して不安定になるんじゃないかって、すげぇ心配してんだよ。
しかも夢の男に会いに行ったんだろ?
一人で行かせた事を後悔してたぜ。どうして亜里沙に前もって言わなかったんだ?』

「…一人で来たかったのよ。
亜里沙に言ったら絶対についてくると思ったから、出るときに駅でメールを入れたのよ」

『ったく、心配ばっかりかけやがって。で、夢の男ってのには会えたのか? んなもんいなかったんだろ?』

説明できず黙り込んだ事で逢えたと理解したらしく、 明らかに拓巳の声の調子が変わった。