「あのねぇ、何度も言ってるでしょ? 私には好きな人がいるのよ」
「それってさ、例の夢の人だろう? いつまで現実逃避してるんだよ」
チラリと流し目で見られると、違うと否定できなくなり、グッと言葉につまる。拓巳は陽歌が夢に出てくる男性に恋をしている事を知っている。
夢から抜け出せず、現実を見ようとしない陽歌を心配する亜里沙が、拓巳と付き合わせようと色々と情報を与えているらしい。
質問を明らかに肯定する陽歌の表情に、拓巳はハアッと大きな溜息を吐くと、突然腰を引き寄せ抱きしめた。
思いがけない拓巳の行動に陽歌は戸惑った。これまでの恒例告白で、ここまでされたことはない。
いや、告白じゃなくても、6年間の友人(?)関係の中で、こんな風に触れられたこともなかった。
人気が無いとは言え、オフィスで拓巳が告白以上の行動に出るとは、想像すらしていなかった陽歌は、突然の事で暫し抵抗どころか声を出すことさえ忘れていた。
「ほら、あったかいだろ?
夢じゃこんな風にはいかないよな?」
あったかい…っていうか暑いわよ!
喉もとまで込み上げた台詞を吐き出そうと勢いをつけて顔を上げたが、拓巳の顔が鼻が触れそうな程近い所にあった為、思わずそのまま飲み込み身構えた。



