18歳を迎えた頃から時々同じ風景を夢に見るようになり、今では殆ど毎晩のように彼と夢で会っている。

最初は単なる夢だと思っていた陽歌も、いつしかその場所が何処かにあるのだと思い始めていた。


美しい丘。


愛しい人。


まるで誰かが自分を呼んでいるように感じる。


だが、それがどこであるのか、彼が誰なのか、これまでの夢の中で手がかりになるものを得ることは出来ていない。

20代最後の年を迎え、陽歌は現実と夢との狭間で葛藤していた。



前に進みたいのに、彼を忘れられない。

だけど、このままじゃいけない

知りたい

あの夢が何なのか…

どうして夢を見るようになったのか…

その理由を知らなければ、私は前に進む事が出来ない。

窓から吹き込む風の唄が、夢の中の丘を吹きぬけたそれと重なり切ない思いが込み上げてくる。

何故…

こんなにも彼に惹かれるのだろう…