「僕は…覚えているよ。
茜がおなかに語りかけながら、子守唄を歌っていた事。
僕と茜と赤ちゃんとで三人で生きたいと夢見ていた事。
あの時、茜はちゃんと母親として子育てをしていたんだね」
「そうよ。茜は幸せだったと思うわ」
「…そうだといいね、蒼。
それでも僕はやっぱり茜と一緒に悩んだり、喜んだり、成長の過程を共に楽しんで、子育てをしたかったと思うよ」
そう言うと晃は誰かの姿を求めるように窓の外を見つめた。
いつの間にか雨は上がり太陽が雲の隙間から覗き始め、雨の名残の水滴が輝いている。
雨上がりの太陽をいっぱいに乱反射して、部屋へ光の粒をキラキラと注いでいる雨粒が、あの日の茜の笑顔を思わせ思わず眩しさに目を細めた。
君の微笑みはいつだって僕の傍にある。
例えば吹き抜ける優しい風の中に
例えば降り注ぐ柔らかな日差しの中に
命の宿る全ての中に僕は君を感じることが出来る。
なのに君に触れる事は叶わなくて
だから僕はいつだって君を求めてしまうんだ。



