銀の雨粒が窓を濡らし、大地に恵と潤いを捧げている。
サラサラと優しい雨音が子守唄のように耳をくすぐり、優しい気持ちになるのはこんな情景の中にも茜との思い出を見つけてしまうからだろうか。
晃は窓辺に立ち雨に潤いその色を濃くしている紫陽花の花を見て、懐かしい思い出を引き出してみる。
どんな風景にも、どんな瞬間(とき)にも晃の傍にはいつも茜の笑顔がある。
晃の視線の先には最愛の息子が天使の微笑みを浮べ眠っている。
晃は暁の額に貼りついた髪をかきあげながら愛しげに見つめて呟いた。
「眠っていれば天使なのにね。
…茜、暁には僕だけじゃダメなのかな?」
小さく吐き出される溜息は雨音に掻き消されていった。
「君がいたら…暁はどんな子になっていたんだろう」
考えても決して何も変わらない
望んでみても決して叶わない。
分かっているからあえて声に出した事など無かったけれど…。
こんな銀の雨が涙を流す日は、幼い君と出逢ったあの日を思い出す。
小さな紫陽花のように雨の中うずくまった少女。
瞳に涙を溜めて、死と戦う恐怖と生きる煌きを教えてくれた少女。
暁はあの頃の君と同じ年頃になったよ。



