春の香りがするその風はどこか懐かしくて胸が切なくなる。 記憶を揺さぶるような感覚を追い求めた時 不意に視界の端に何かが飛び込んできた。 ふわり…… 淡い薄桃色のそれを思わず手を出して受け止める。 ―――! 驚きに目を見開き信じられない気持ちでその場所を振り返り呆然と見つめた。 茜が逝ってから咲くことの無くなった桜が 見事に満開の花をつけていた。