【長編】ホタルの住む森


子どもの頃、一人の少女と約束を果たす為、僕は医者になる道を選んだ。

約束を守るため、少しでも早く父を越える医者になりたくて、周囲の反対を押し切り、中学の卒業を待たずにアメリカのハイスクールに転入した僕は、猛勉強の末、飛び級でハイスクールを卒業した。

それでもまだ時間が足りなくて、更に大学の単位も飛び級で進み、6月に20才になったばかりの僕は、既に大学の卒業資格を取得している。

日本に呼び戻されなかったら、今頃はアメリカで医大に進み尊敬するドクターホフマンの下で学んでいただろう。

でも帰国していなかったら、今の僕たちは無かった。

あの頃、自分を駆り立てるものが何だったのかは分からずに、早く医者になりたくて、時間に終われるように急いでいた。

何故そんなにも駆り立てられたのか、今なら分かる。


必ず助けると幼い日に約束した少女が茜で、彼女と再会し助けるためだったんだって。


それでも…


こんなに急いでもまだ、茜の病状には追いつけない。


君の時間に追いつきたくて必死にがんばっても、その時は確実に近くなってきている。


茜…どうしたら、君をここに繋ぎ止められる?


何を犠牲にしても、君だけは失いたくないのに。