「紫陽花を見ると初恋の男の子を思い出すの」 赤紫色の傘に水滴を弾きながら茜は振り返って言った。 「へえ…」 僕は少しムッとして茜を見つめる。 「茜の初恋は右京じゃなかったの? けっこう気が多いのかな?」 わざと意地悪に言ってみるのは、少し困った君の顔が見たいから。 茜はくすくす笑って僕の黒い傘に自分の傘をぶつけてきた。 銀の粒が飛び散るそれはパラパラと紫陽花にかかり、一層その色を鮮やかに増してゆく。 「私が生きているのは、その男の子のお陰だから…」