雲ひとつない青い空を見上げる私に,
太陽から容赦なく眩しい日差しが降り注いでいた。

朝早い天文館は,
人通りもほとんどなく
夜の喧騒が嘘みたいに
静かだった。

近くのドーナツショップに入ると,
コーヒーとマフィンを頼み
カウンター席に座った。

ゆっくりと朝のコーヒーを
一人で楽しむなんて
いつぶりだろうか。

真人の部屋で目覚めると,
必ず入れてくれたコーヒーの味を思い出した。

夜の営みの跡を残すベットの上で,
朝の穏やかな時間を二人で過ごす幸せを
当たり前のように感じていたあの時の幸せな気持ちが,ふと思い出された。

私の身体を一つ一つ確かめるように,
体中にkissを残す真人の愛撫が
よみがえってきて,

体の芯にある残り火がくすぶり始めるような気持ちになって,
顔が高潮してきたのを感じた。

私はグラスに入った水を一気に飲み干すと,
残っていた氷の欠片を口に含み
思い切り噛み砕いた。

その冷たさが唇から体中に浸み込んで,
私の心を冷やしていった。

こんな時に,どうして真人との情事を思い出すのだろうか。

と,自分自身のまだ女として残っている思いに苦笑した。

私は店を後にすると,そのまま南埠頭へ向かった。