真人がギターで,
私がボーカル。

その時,私は知らなかった。

真人がこの夜に

私の前からいなくなるのを・・・

「 Try to remember 」

この曲を
最後に選曲した真人の気持ちは,
その当時の私には分からなかった。

透との結婚生活をはじめて1年経って,
夜泣きしている真子をなだめている時につけていた深夜放送から流れてきたのは,

この曲だった。

せつない男の人の歌声だった。
ふいに耳に流れ込んできた
メロディーラインが,
真人を思い出させるのに十分だった。

私は溢れる涙と
真人への想いを抑えられず,
一人声を殺して泣き続けた。

その後,
香港映画「玻璃の城」で
レオン・ライが歌っていたことを知った。

大学時代の恋人が,
結婚して再会して,
二人で事故死するストーリーに
私の胸は締め付けられた。