もう明日になる時間に,
ようやくベットに横になると,
透が手を伸ばしてきた。

「なあ。いいだろう・・・」

「ごめんなさい。
 疲れているの。
 薬も飲んできたから寝るわ。」


私は,ここ数年,透から逃げていた。

透には,
愛人がいることくらい分かっていた。

お互い暗黙の了承の下なのか,
透は家族を壊すつもりはないらしかった。

それが透の社会的信用のためであっても,私も同じ気持ちだった。

私は睡眠薬のおかげで,
ゆっくりと眠りに落ちていった。