真人の声を数年ぶりに聞いた私は,

しばらく身動きもできず,
涙をふくこともなく,
ただその場に立ちすくんでいた。

ただ

私には
決して連絡をしてくることのない
真人の最後に聞いた棘のある言葉が
心の奥から湧き上がってきて,
私の心を突き刺し始めた。

その痛みに私は耐えかねて,
慌ててシャワーを浴びると,

そのまま渉を起こすことなく
部屋を後にした。

それからの毎日は,
私の心は真人のことでいっぱいだった。

どうにか家事をこなし,
子どもや旦那の世話をしていても,

私の心は,
自分で抑えようのない真人のことで
いっぱいだった。

真人への想いで,
息をするのも苦しくて,
食事も満足に喉を通らなかった。

ふとしたことで,
真人を思い出し,
涙が溢れてきてしまった。

「来月に,真人はここに帰ってくる・・・」

その言葉だけが
何度も何度も
エコーのように繰り返されていた。