私は,
自分自身の中に目覚めた感情を自覚した。

もしかしたら,
私はこの男に恋をするかもしれない。

今の主人には持ったことのない感情を,
この男には持つかもしれない。

それは,
胸の奥に大切に抱えている
真人への感情と同じ感情・・・
もうずっと過去に忘れてしまった感情。



男はその答えに反応を見せずに,
そのまま歩きつづけた。



波は一定のリズムを刻んで
海岸へ波を打ちつけ,

その波間に
まるで笹舟のように
何人かのサーファーが
大きな波を待っていた。

そのはるか向こうに,
海の青さと空の青さの境界線が
曖昧な線を描いていた。


私たちから数メートル後ろでは,
若い男がモモに遊ばれながら,
時々楽しげな笑い声を上げて
ついてきていた。



空には
二羽の鳶が上昇気流を探して,
円を描いて舞っていた。

きっとあの二羽はつがいなのだろう。

お互いの距離をある程度保ちながら,
まるで二人でダンスを
舞っているような優雅さで
大きな翼を広げていた。