水上は握り返してこなかったけど、振り払いもしなかった。
振り払われるんじゃないかって不安も若干あったから安心した。
手を握ったまま、俺が水上を引っ張るようにして歩く。
歩幅は小さく、速度は遅く……。
そればっかりに気を取られて、会話が無くなっていることに気付かなかった。
水上は黙って着いてきている。
静かすぎて、途中何度もいないんじゃないかと思ったけど、手には確かに水上の温もりがある。
俺、なんか今、すげー幸せかも……。
「水上」
「……え、あ!?
な、なに?」
突然声をかけられて驚いたのか、水上の返事が少しうわずった。
「気まずくない?」
「え?」
水上がキョトンと目を丸くする。
「俺は会話無くても平気なんだけど……。
でももし水上が気まずいって思うなら、何か話そうかなって思って」
俺が話し終える前に水上が口を開いた。
「そんなことないよ」
そう言って小さく笑う。

