窓のない窓際

 
水上は握り返してこなかったけど、振り払いもしなかった。


振り払われるんじゃないかって不安も若干あったから安心した。


手を握ったまま、俺が水上を引っ張るようにして歩く。


歩幅は小さく、速度は遅く……。


そればっかりに気を取られて、会話が無くなっていることに気付かなかった。


水上は黙って着いてきている。


静かすぎて、途中何度もいないんじゃないかと思ったけど、手には確かに水上の温もりがある。


俺、なんか今、すげー幸せかも……。


「水上」

「……え、あ!?
な、なに?」


突然声をかけられて驚いたのか、水上の返事が少しうわずった。


「気まずくない?」

「え?」


水上がキョトンと目を丸くする。


「俺は会話無くても平気なんだけど……。
でももし水上が気まずいって思うなら、何か話そうかなって思って」


俺が話し終える前に水上が口を開いた。


「そんなことないよ」


そう言って小さく笑う。