窓のない窓際

 
「わ……私すぐはぐれちゃうんだ。
だから……掴んでていいかなあ?」


硬直してしまう。


さっきから、俺の心臓ヘンだ。


物凄い速さで脈打ってる。


こんなの初めてなんだけど……なにこれ。


心臓爆発しそう。


もしかして俺、病気?


「よ……喜んで」


女に服掴まれるのなんて日常茶飯事で、特になんとも思わなかったはず。


なのに、どうして今日はこんなにドキドキするんだ……?


「ありがとう宮本くん」

「……」


もはや反射的に俺は水上の手を握っていた。


「みや……!?」


驚く水上を無視して足を進めた。


「これなら絶対はぐれねえだろ」

「え……?」

「だって俺、水上のこと離さねえから」


水上が目を見開く。


「……なんてな!」


慌てて笑ってみせたけど、その笑顔はぎこちなかったと思う。


クサイ台詞なんて今まで散々腐るほど吐いてきたけど、ここまで意識したのは初めてだ。