「瑞希、残念」
「は?
何が」
「水上(ミナカミ)、彼氏いるよ」
ふあっとダルそうにあくびする寿也に勢い良く食いつく俺。
「水上!?
水上というのかあの子は!
なんつー可愛い名前だ!
何水上っていうの!?
佐藤水上!?
吉田水上!?」
「お前バカじゃねーの?
水上は名字。
名前は確か梨華(リカ)」
「水上梨華!?
めちゃくちゃ可愛いじゃん!」
一人盛り上がる俺を、寿也は面倒くさそうに眺めている。
「……つーか聞いてた?
あいつ彼氏いるって言っただろーが」
「へえ?
誰?」
「誰かまでは知らない。
他校だとは聞いたけど」
「ふーん?
まあ、いてもいなくても関係ないんだけどな」
水上梨華、ね。
彼氏には悪いけど、別れてもらいましょーか。
あいつは絶対俺のものにする。
「……あんまり無茶すんなよ」
寿也が呆れたようにため息をついたけど、今の俺には聞こえなかった。
だって今の俺の全神経は、水上梨華、あいつに向けられてるから。

