窓のない窓際

 
水上の頬に引かれた1本の線。


俺は慌ててその線を指で拭った。


「大丈夫か?」

「ごめ……」


水上のまつげに付いた雫が揺れる。


水上がまたたくと雫は落ちて、水上の頬に再び透明の線を引いた。


その線を俺の指が再び消す。


「ごめんね……ありがとう……」


涙で潤んだ瞳で俺を見上げると、水上は申し訳なさそうに笑った。


あー……ちくしょー……。


どこまで可愛いんだよ、コイツは……。


ていうか、まさか泣いてくれるなんて思わなかった……。


この映画は本当に感動するんだ。


俺だってこの映画観て何回も泣いたし……。


だから、水上がこの映画を観て泣いてくれて本当に嬉しかった。


同じものを同じ気持ちで観れるっていいよな……。