窓のない窓際

 
照明が消えていく。


上映時間を迎えた室内は真っ暗な闇に包まれる。


「ひ……!?」


すると突然、水上が小さく悲鳴を上げた。


「水上どした?」

「まっ……真っ暗……!
真っ暗になっちゃった!」


なぜか水上はガタガタ肩を震わせている。


「え、そりゃなるだろ。
映画館なんだから」

「へ……?
じゃあ宮本くんも真っ暗なの……?」

「まぁ」


すると水上の肩の震えが止まり、代わりに安堵のため息が聞こえた。


水上って……ホント不思議なやつだな。


「宮本くん」

「ん?」

「あのね……私、今まで映画館って来たことないの……」

「え!?」


驚いた。


今時、映画観たことないヤツなんているのか。


「それと……私、暗いところ苦手で……」


水上が申し訳なさそうにうなだれる。