「学生2枚」
浮かない顔つきの水上を半ば強制的に映画館に連れ込んだ。
「飲み物いる?」
「いらない」
「ポップコーンは?」
「いらない」
さっきから眉を寄せたままの水上。
「あ、もしかして他に観たい映画あった?」
「……」
水上が俺を睨んだ。
でもなぜかその顔は今にも泣きそうで……。
「水上?」
水上は俺からフイッと視線を外して、まだ何も上映されていないスクリーンに視線を戻した。
……そんなに映画が気に入らなかったのか?
それから水上は一言も口をきいてくれなくて、俺たちの間には必然的に沈黙が生まれた。

