窓のない窓際

 
予想外の展開に思わずたじろいでしまった。


「え……映画嫌いなの?」


そう尋ねると、水上はうつむいたまま目だけ俺の方に向けた。


前髪の隙間から覗く綺麗な瞳が困惑の色を浮かべている。


「嫌い……ってわけじゃなくて……」

「ならいいじゃん!」


俺は水上の手を握ったまま再び歩き出した。


「どうしても観せたい映画があんだよ!
めちゃくちゃ面白いんだぜ!
絶対感動するって!
俺が保証する!」


こないだ、暇だったから学校帰りに1人で映画を観た。


特にどれを観るとか決めてなかったから、なんとなく適当にあれを選んだんだ。


ありきたりなラブストーリー。


……だと思ってた、観るまでは。


最初はぼんやり観ていたのに、いつの間にか、俺はその映画に惹き込まれていた。


ストーリーが面白いだけじゃなく、描写もすごく綺麗で……。


何よりイメージソングがすごく良い曲だった。


あれ以来、あの映画は俺のお気に入り。


だから、どうしても水上に観せたかった。


最近、水上は元気がない。


でもあれを観れば絶対元気になると思う。


絶対、笑顔になると思う。