窓のない窓際

 
「私もね、同じこと考えてたの……。
宮本くん気まずくないかなって……」

「まさか!
気まずいわけないじゃん!
俺、水上と手繋げてるだけで幸せっていうか、一緒にいるだけでいっぱいいっぱいだから会話どころじゃな……ってまた何言ってんだ俺は!」


慌てる俺を見て、水上は「そっか」って小さく呟いて笑った。


それからまたしばらく2人とも無言のまま通りを歩いた。


俺は沈黙が嫌いだ。


嫌な空気になるから。


だから女と歩く時は必ず何かベラベラ喋るようにしてる。


でも、今日は沈黙が好きだ。


嫌な空気になるどころか、ほんわかした柔らかい空気が俺を包む。


感じるのは水上の手の温もりだけ。


それがいい。


ずっとこのままがいい。


気まずさを気にしてベラベラ喋って気疲れする必要もない。


あー……。


なんか……水上っていいな。