「俺さ、ずっと真っ白い雪が嫌いだったんだ。出来のいい兄さんにいつも比べられて、同じ季節に生まれたのにあいつだけ白い雪が似合ってさ。どうせ俺は泥の混じった黒い雪なんだろうってひがんでたよ」


ただじっと聞く俺に、嫌な奴だろ?とでも言いたそうな表情を浮かべる雪。


「でもある時気付いたんだ。兄さんは一度も俺をそんな風に見た事がなかったって。…いや、兄さんとあいつに気付かされたって方が正解か。それから真っ白い雪見るたんび心が洗われるようで、冬兄さんの分もしっかり生きようって思ってるよ」


はっきりした口調でそう言い切った雪の笑顔は澄み切って、眩しい程輝いていた。


その輝きに魅入られたせいからか、気付けば俺は今までずっと言えなかった言葉を雪に伝えていた。


「…冬を守れなくて、本当にすまなかった」


そう言って深く頭を下げると雪が静かに顔を左右に振る。


「お前のせいじゃないよ。お前ならどんな兄さんでも最後まで守ってくれたはずだって思ってるから一度も恨んだ事もない。だから二度と謝るなよ。これは俺と冬兄さんからの命令だからな」


「…性格はかぶるわ命令されるわで何か素直に喜べないけど、ありがとな。俺もちゃんと乗り越えるよ」