ドングリくんの透き通った湖

 どんぐり、どんぐり、どんぐりこ。

 森の奥の奥、ドングリくんたちが、お話をしています。

「僕たちは将来、なんになろうか?」

 小さなドングリくんが、すやすやと、こたえました。

「僕は何百年も生きる大きな木になり、森のおじいさんになるよ」

 大きなドングリくんが、胸をはって答えました。

「僕はコマやおもちゃになって、子供たちをたのしますんだ」

 すると、帽子をかぶったドングリくんが、恥ずかしそうに答えました。

「僕はどこまでも透き通った、湖になるよ」

 それを聞いた、仲間たちは、びっくり。帽子のドングリくんに、いいます。

「ドングリは、湖にはなれないよ」 

 帽子をかぶった、ドングリくんがしょげると、仲間たちは彼をクスクス笑い、その場を離れて行きました。

 一人になった帽子のドングリくん。湖になる夢は捨てられません。
 どうすればなれるか、森の仲間たちに聞いて回ります。

 大きなクマさんは、首を傾げながらも、ドングリくんが可哀想になり、こういいました。

「湖は広いから、ご飯をいっぱい食べて、体を大きくしなきゃね」

 クマさんの肩に止まった小鳥も、その言葉に付け足します。

「透き通った湖になるには、優しくなきゃいけないよ。だって魚たちが暮らせるように、見守ってあげなきゃいけないからね」

 その日から、帽子を被ったどんぐりは、ご飯をいっぱい食べ、みんなと仲良くすることを心がけました。

 その 一生懸命な姿を見て、他のドングリたちも思いだしたのです。

「本当は無理だと、諦めていた大きな夢」があったことを。

 小さなドングリくんは、あの『広々とした青空』になりたいと思いだし。

 大きなドングリくんは、『ポカポカと暖かい風』になりたいと思いだしました。

 それぞれが皆、その夢に近づけるように努力します。

 森の仲間たちも、ドングリくんたちを、温かい目で見守るのでした。

 そんなある日のこと、帽子のドングリくんに向けて、どこからか声が聞こえて来るのでした。

 それは、暖かな日差しがさす、広々とした青空から聞こえます。

「おーい。ここだよ。僕は青空になれたんだ」

 小さなドングリくんの声でした。

「みんなと、仲良くして友達をいっぱい作ったら、夢が叶ったんだ」

 すると今度は、ポカポカと暖かな風に乗り、大きなドングリくんの声がしました。

「僕もなれたよ、静かな心を持って、そっと触れていたら、風になれたんだ」

 驚く、帽子のドングリくんの周りを、彼らは包みこんで話しかけます。

「さあ、今度は君の番だよ」

 優しい帽子のどんぐり君は、大好きな友達の夢が叶ったことに、嬉しくて涙が溢れ出ました。

 キラキラと光るキレイな涙がこぼれると、それは、どんどん広がり、やがて本当に大きな湖になりました。

 森の動物たちは、ドングリくんたちの大きな夢が、叶うとは思いませんでした。

「僕もひょっとして」

「私も大きくなったら」

 みんなの心の中でも、あたたかい夢が、『ホクホク』と、ふくらんでいきます。

 耳の長いウサギさんは、大きくなったら、パタパタと空を飛ぶ、ペガサスになりたいと思います。

 真っ赤なバラの花は、空をキレイにかざる、虹になりたいと思います。

 大きすぎる夢なんて、ひとつもなく、「むりかも」なんて、思う者は誰もいませんでした。

 それはこの森に、誰も今までに見たことのない、どこまでも透き通った湖が、残り続けるからでした。

 おしまい