トップホストを辞めたイケメンが、いきなり私の専属編集者になるなんて聞いてない!

 「どうして?」

 そう聞くと、彼は立ち上がって私の過去作を一冊ずつ取ってきた。

 「あなたのキャラクター、全部同じなんですよ」

 「同じ!?」

 吉永くんは赤ペンで、私が過去作で描いたキャラクターを容赦なく丸で囲んだ。

 「確かに、ヒロインが優しくて、不良男子との関係が気になるっていうのはキャラクターの成長として最高ですよ。でもね、このままだとファンの読者は『ああ……千代子先生の新作? まあ普通だよね。キャラ見ればどう終わるか分かるし』みたいに思うんです」

 言われるほど痛い。彼がこんなに容赦ない人だとは知らなかった。

 由香里さんとは違うなあ。彼女は私の作品を読むとすごく喜ぶけど、同じくらい直しもたくさん指示する。

 正直すぎる。痛い。

 「じゃあ……直すんですね」

 「はい。今すぐに」

 「え!? でも一時から……」

 相手は手を上げて制した。

 「今まだ七時ですよ」

 そして立ち上がって私の肩を軽く揉み、またあの心臓をわしづかみにする笑みを向けた。

 「二人で頑張れば、絶対に仕上がりますよ」

 担当の中にはすごく厳しい人もいると聞く。だから作家に半ば強制的に新作を絞り出させるというのも不思議じゃない。

 うう……由香里さん、お願いだから戻ってきて。

 でも、プロットを変えたりキャラクターを新しく書いたりすればするほど、彼は全部却下してくる。正直、初めてデビューした頃を思い出すなあ。

 あの頃はここの専属作家じゃなかったけど、担当はこういう真面目な性格の人だった。

 連載が終わってここに来て、由香里さんに担当してもらうようになった。

 まさかプレッシャーをまた感じるとは思わなかった。

 「はあ……もう思い浮かばない……」

 結局、机に突っ伏して、ただ虚ろに紙の束を見つめるだけだった。

 「はい」

 吉永くんがコーヒーを差し出してきた。カフェオレだ。

 「私がカフェオレ好きだって分かってたの?」

 彼はしばらく黙り、それから近づいて小さく囁いた。

 「甘いもの好きですよね? 覚えてますよ。僕の記憶力を侮らないでください」

 「あなた……私のこと……覚えてたの」

 「当たり前ですよ。僕はずっとあなたを気にかけてきたんです。あなたが僕を気にかけてくれたのと同じくらい」

 羽のように軽く、柔らかい。あの鍛えられた体つきとは正反対だ。