「私と、結婚してください」
直哉の言葉に、菜月は目を見開き、そして潤める。
両手を、口元に当てた。
「はい!」
「菜月。本当に、いいの?」
「当たり前じゃない!」
涙を拭いながら、菜月が微笑む。
「後悔しない?」
「もう」
「俺……一生、菜月と笑っていたい」
「私も!」
「辛いときも、一緒にいたい」
「私も……」
二人は、感極まって抱き締め合った。
二人は、それぞれの両親や親戚や友達に、結婚することを報告し、入籍日や結婚式について相談した。
結婚雑誌を読んだり。
招待状を作ったり。
ドレスや結婚指輪を選んだり。
指輪は、男性用はシンプルな金属のリング。
女性用は同じ形で、小さなダイヤモンド入りにした。
結婚式が、二人にはとても楽しみだった。
一日でも早く来ないかと、指折り数えて過ごした。
そして。
結婚式当日。
控え室で、裾の長いウェディングドレスを着た菜月が、姿見を見ている。白いブーケを握っている。
とても、よく似合っていた。
ただ、少しだけ、ナーバスな表情をしている。
いろんなことがあった。
勤務先のコーヒーショップで再会してから、これまで。
初めてのデートは、高原だった。ポピーが咲いていた。
同棲したのは彼の部屋。
喧嘩もしたし、仲直りもした。
「私……これで、よかった!」
幸せを噛み締める。
そこへノックの音がし、タキシード姿の直哉が入ってくる。
いつもより凛々しい。少し、式用に化粧をしていた。
「綺麗だよ、菜月。女神みたいだ!」
菜月の姿に、直哉が見惚れる。
菜月は、頬を染めた。
「……もう、なによ。女神って」
「これが、俺の花嫁さん! 綺麗だなぁ! すごく嬉しいよ」
ヴァージンロードを、新婦とその父親が歩いてくる。
みんなが、笑顔で祝福している。
新郎のところまで来ると、父親と別れ、二人になる。
神父の言葉に、誓いの言葉を交わす。
式はつつがなく進行する。
指輪を交換し、
新婦のベールを上げる。
そして。
二人は、誓いのキスを交わした──。
