実家の母と電話していた。
母からかけてきたのだ。
話が長い。菜月はうなずきながら聴いた。
どうでもいい話が多かった。いつものことだ。
しかし、切る間際になって、母が言った。
「菜月、あんた、お見合いしなさい」
「……は?」
「というわけなの」
菜月は困ったように言った。
直哉の部屋に来ていた。
二人は、ソファに座っていた。
「ほんと、お母さん、勝手なんだから。
それに、絶対、わざと切り際に言ったのよ!
そういう人なの!」
聞かされた直哉は、複雑な気分になった。
「なんだよ、それ」
「大丈夫よ、断るから」
菜月は笑うが、直哉は焦って言った。
「なぁ、菜月。そろそろ、親御さんに紹介してくれよ」
「直哉を?」
「うん」
「だって……恥ずかしいよぉ」
菜月は頬を赤くする。
「恥ずかしいって、なんだよ? いいだろ」
「だってぇ」
「俺は、親にも紹介できないほど、恥ずかしい男なのか?」
「そういう意味じゃないけど……」
「俺たち、真剣につきあってるだろ」
声が尖ってしまう。
「なによ、直哉だって、私をまだ親に紹介してくれないじゃない」
菜月も、つい苛立ってしまった。
「それは……これから、じっくり紹介しようと思ってて」
「私だって、そうよ」
「でも、今回は……」
「なによ、私が悪いの?」
「だって、そうだろ!」
二人の、初めての喧嘩だった。
その後、しばらく、二人は会わなかった。
意地を張ってしまった。
「なによ! 直哉のばか……」
「菜月のわからず屋!」
だが、二人ともだんだんと冷静になり、会えないのが寂しくなってきた。
「私がよくなかったかな?」
「俺が言いすぎたかな?」
そんなことを、思うようになった。
自分の部屋でスマホを見て、菜月はため息をついた。
なんの連絡もない。
どうしたらいいだろう?
直哉も、自分からLINEを打つか、自室で迷っていた。
スマホを持ったり、離したりした。
「あ〜。菜月!」
「直哉! ごめん」
ある日。意を決して、直哉の部屋を訪れると。
菜月はついに謝った。
「菜月……!
ごめん。俺こそ、自分のことを棚上げしてたよ」
「ごめんね。親にも、友達にも紹介するから」
「俺も。俺も、紹介する」
「ごめん……。私、親に恋愛の話したことなくて。
直哉が初めてなの」
菜月は恥ずかしそうだった。
「俺が初めて? か、かわいい」
直哉は、菜月を抱きしめると、愛おしそうにキスをした。
「んっ……もう、直哉」
「愛してるよ。菜月」
「私もだよ」
「俺、幸せだよ」
「私だって……」
菜月は今夜も、泊まって行った。
