一度引き下がったはずの裏で、悪魔課長・神崎葵はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべたままでいた。
先ほどの一ノ瀬と天音のペア発表に、唇を噛み締めていた敗北ムードのイケメン2人に向かって、彼女はふっと手招きをする。
「フハハハ……一ノ瀬に一歩出し抜かれたと思っている……そこの殿方、約2名。カモーーーン!!」
漆黒の翼でも見えそうな悪魔の手招きに、流石の神楽坂迅エリア長も眉間をピクリとさせる。それでも、ギリギリでクールさは崩さない。
「……まだ何か、ご指示でも?」
「フハハハ……クールぶってみても、内心焦りまくってるわよ神楽坂ちゃーん。実はね、君にも大いなるミッションがあるのだなぁ!」
その言葉に、神楽坂エリア長の端正な眉が、わずかにピクリと動いた。
「……何でしょう」
「『オータムフェス』よ!」
ビシッと指を突きつけられた神楽坂エリア長と、背後で聞き耳を立てていた橘くんの眉が同時にピクリと跳ねる。
「たしかにあの薬師寺先生には、白鳥駅前店の氷室薬局長のような派手な華やかさはないわ。だけど……飾らない素朴さと、ふとした瞬間に見せる『魔女っ娘』みたいな危うい魅力がある……! 見たいでしょ、神楽坂ちゃん? 一ノ瀬は別店舗だから、普段のあの子の素顔なんてなかなか見られないわよね〜?」
「「!?」」
図星を突かれたように一瞬息を呑むイケメン二人に向かって、葵課長は不敵に笑う。
「今回のオータムフェス、企画統括は神楽坂ちゃんに任せるわ!!」
「……かしこまりました、神崎課長!」
即座に引き受けた神楽坂エリア長に、葵課長はスッと目を細めて耳打ちした。
「なかなか表情を崩さないわねぇ……ほんとは『ドスケベ選手権』とかあったら即入賞しそうな隠れ執着のくせに……」
「なっ……私はそんな不心得な……!」
流石の冷徹エリートも、これにはわずかに頬を引きつらせてたじろぐ。
そこへ、放置されてフラストレーションが爆発寸前だった橘くんが飛び込んできた。
「ちょちょちょちょ!! 俺は!? 俺はどうなるんですか課長!!」
ジタバタする橘くんに、葵課長は妖しく微笑む。
「あんたにもちゃんと用意してあるわよ、橘きゅーん?」
「っしゃーーっ!!!」
「あんた……母校は東京薬科学大でしょ? 天音ちゃんの後輩ってわけね」
「ハァイ!!」
「名付けて、『東京薬科学大コンビで行く、秋の母校巡り&店舗PRデート』だ!!」
「イエーーーイッ!!」
ガッツポーズで大喜びする橘くん。しかし、葵課長はスッと冷徹なビジネスアイに戻る。
「でも、あくまで『仕事』ということは一瞬たりとも忘れるなよ、橘? 隣のエリアでは既に、西城大(ほのかと拓海)のコンビでデートらしき店舗PRをやってのけた。あいつらは十分に集客をもぎ取ってきたんだからね」
(ほう……あの陣内くんのエリアか。それはさぞ盛況だったろうな……)
神楽坂エリア長は、ライバルである陣内エリア長の鮮やかな手腕に、心の中で一目置くのだった。
さぁさぁさぁ!
これで一ノ瀬・神楽坂・橘、全員にそれぞれの弾が装填された。白鳥駅前店と所沢駅前店の対抗戦も、これでまた対等で最高にスリリングな戦いが楽しめそうだわ!
ワクワクが止まらんぜ、フハハハーー!!
* * *
そんな修羅場と悪魔の企みとも知らず、私は資料のコピーを抱えてそっと調剤室に戻ってきた。
すると、そこにいたのはなぜかご機嫌な様子の綺麗な悪魔姉さん(神崎課長)だった。
「フハハハ……女版・陣内拓海……。さあ、その『無自覚なイケメン捌き』、たっぷり見せてもらうわよ……?」
「えぇ〜〜ん!! 私はあんな敏腕でコミュ力おばけなイケメン最年少エリア長と一緒にしないでくださいぅぅ〜〜!!」
平穏な日常とモラトリアムを心から望む私をよそに、本部の悪魔と、ハイスペックイケメンたちの怒涛の猛アタックラッシュは、今日も加速していく。
(もうダメ……これ以上は心臓が持たない……っ!)
私は自分の胃が盛大に爆発四散するのを防ぐため、白衣のポケットから『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、震える手で一包、一気に喉へと流し込んだのだった。
先ほどの一ノ瀬と天音のペア発表に、唇を噛み締めていた敗北ムードのイケメン2人に向かって、彼女はふっと手招きをする。
「フハハハ……一ノ瀬に一歩出し抜かれたと思っている……そこの殿方、約2名。カモーーーン!!」
漆黒の翼でも見えそうな悪魔の手招きに、流石の神楽坂迅エリア長も眉間をピクリとさせる。それでも、ギリギリでクールさは崩さない。
「……まだ何か、ご指示でも?」
「フハハハ……クールぶってみても、内心焦りまくってるわよ神楽坂ちゃーん。実はね、君にも大いなるミッションがあるのだなぁ!」
その言葉に、神楽坂エリア長の端正な眉が、わずかにピクリと動いた。
「……何でしょう」
「『オータムフェス』よ!」
ビシッと指を突きつけられた神楽坂エリア長と、背後で聞き耳を立てていた橘くんの眉が同時にピクリと跳ねる。
「たしかにあの薬師寺先生には、白鳥駅前店の氷室薬局長のような派手な華やかさはないわ。だけど……飾らない素朴さと、ふとした瞬間に見せる『魔女っ娘』みたいな危うい魅力がある……! 見たいでしょ、神楽坂ちゃん? 一ノ瀬は別店舗だから、普段のあの子の素顔なんてなかなか見られないわよね〜?」
「「!?」」
図星を突かれたように一瞬息を呑むイケメン二人に向かって、葵課長は不敵に笑う。
「今回のオータムフェス、企画統括は神楽坂ちゃんに任せるわ!!」
「……かしこまりました、神崎課長!」
即座に引き受けた神楽坂エリア長に、葵課長はスッと目を細めて耳打ちした。
「なかなか表情を崩さないわねぇ……ほんとは『ドスケベ選手権』とかあったら即入賞しそうな隠れ執着のくせに……」
「なっ……私はそんな不心得な……!」
流石の冷徹エリートも、これにはわずかに頬を引きつらせてたじろぐ。
そこへ、放置されてフラストレーションが爆発寸前だった橘くんが飛び込んできた。
「ちょちょちょちょ!! 俺は!? 俺はどうなるんですか課長!!」
ジタバタする橘くんに、葵課長は妖しく微笑む。
「あんたにもちゃんと用意してあるわよ、橘きゅーん?」
「っしゃーーっ!!!」
「あんた……母校は東京薬科学大でしょ? 天音ちゃんの後輩ってわけね」
「ハァイ!!」
「名付けて、『東京薬科学大コンビで行く、秋の母校巡り&店舗PRデート』だ!!」
「イエーーーイッ!!」
ガッツポーズで大喜びする橘くん。しかし、葵課長はスッと冷徹なビジネスアイに戻る。
「でも、あくまで『仕事』ということは一瞬たりとも忘れるなよ、橘? 隣のエリアでは既に、西城大(ほのかと拓海)のコンビでデートらしき店舗PRをやってのけた。あいつらは十分に集客をもぎ取ってきたんだからね」
(ほう……あの陣内くんのエリアか。それはさぞ盛況だったろうな……)
神楽坂エリア長は、ライバルである陣内エリア長の鮮やかな手腕に、心の中で一目置くのだった。
さぁさぁさぁ!
これで一ノ瀬・神楽坂・橘、全員にそれぞれの弾が装填された。白鳥駅前店と所沢駅前店の対抗戦も、これでまた対等で最高にスリリングな戦いが楽しめそうだわ!
ワクワクが止まらんぜ、フハハハーー!!
* * *
そんな修羅場と悪魔の企みとも知らず、私は資料のコピーを抱えてそっと調剤室に戻ってきた。
すると、そこにいたのはなぜかご機嫌な様子の綺麗な悪魔姉さん(神崎課長)だった。
「フハハハ……女版・陣内拓海……。さあ、その『無自覚なイケメン捌き』、たっぷり見せてもらうわよ……?」
「えぇ〜〜ん!! 私はあんな敏腕でコミュ力おばけなイケメン最年少エリア長と一緒にしないでくださいぅぅ〜〜!!」
平穏な日常とモラトリアムを心から望む私をよそに、本部の悪魔と、ハイスペックイケメンたちの怒涛の猛アタックラッシュは、今日も加速していく。
(もうダメ……これ以上は心臓が持たない……っ!)
私は自分の胃が盛大に爆発四散するのを防ぐため、白衣のポケットから『ラベール胃腸薬プレミアム』を取り出すと、震える手で一包、一気に喉へと流し込んだのだった。
