イケメンだらけのドラッグストアでいつのまにか全員から執着されていました

私、薬師寺天音。
今日は、日頃から過酷なイケメン対応と業務を頑張っている自分への、ささやかなご褒美なのだ!
「かっ……可愛いぃ〜〜……っ!!」
やってきたのは、サンリュオ東銀座店。
私の最推しは、なんといってもシナモンロール! あの白くてフワフワしたフォルムがたまらない。
「はぁ〜、私もあんな風に白くてツヤツヤのお肌になりたぁ〜い……」
いいなぁ、白鳥駅前店の氷室涼香ちゃんなんて、めちゃくちゃ白いブルベ肌の超美人だ。
くっ……私はなんでこんな黄みがかったイエベ肌なのよ!! 周りのハイスペックなイケメンたちだって、どうせみんなブルベの美人さんが好きなんだ……。
「ボムボムプリンくん……私を慰めて……!」
黄色いプリンくんが、棚の端からこちらを見つめながらのんきに微笑んでいる。
……そうよ、イエベだって可愛いものは可愛いんだからいいの! 毎朝しっかりソバカスだって隠して、我ながら頑張っているんだから!
キラキラしたキテューちゃんのディスプレイの裏に回り込んだ、その時だった。
——絶対に見いちゃいけない人を目撃してしまった。
「なっ……か、神楽坂エリア長……!?」
 いつもパリッとしたスーツに身を包んでいる私服姿のエリア長は、オフの日だというのにめちゃくちゃカッコいい……。
尊すぎる……っ!
はっ……! とっさに私は商品の棚の陰へと身を隠した。
落ち着くのよ、よく観察するのよ天音! あの『鉄の神楽坂エリア長』が、こんな可愛いサンリュオショップでいったい何をしているというの!?
(はぁ……はぁ……。もしかして、彼女さんへのプレゼントに買うのかしら……!? そうよね、あのクールなエリア長の趣味とは思えないもの! 彼女さん……羨ましすぎる……っ! 血涙が出そう……っ!)
いったい何を買うつもりなのだろう。息を殺して見守っていると——。
(はっ……かっ、可愛い……っ!)
 なんと、あのいつも隙のない神楽坂エリア長のクールな表情が、目に見えて崩れているではないか! 恥ずかしそうに、周囲をキョロキョロと気にしながらレジへと向かっている。
彼が手に取ったのは……まさかの『シナモンロールのボールペン』!!
(っ……! 彼女さんも、やっぱりデスクワーク中心の事務仕事とかを頑張っている人なのかしら……!)
神楽坂エリア長は、少し挙動不審になりながらレジの店員さんに声をかけた。
「あの……これ、プレゼント用に包みましょうか?」
「いっ……いや……! 別に特別なプレゼントというわけではない……仰々しく包まれると変になるから……そのままでくれ」
「はっ、はわわ……慣れてるのね……! あんなイケメンにこんな可愛い小物をさらっと買ってもらえる彼女さんが羨まし過ぎて……私、泣きそうだわ……っ!」
推しのシナモンロールコーナーに別れを告げ、私は涙を拭いながらそっと店をあとにする。
「シナモンロールちゃん……今日はごめんね。私、今日はイエベ仲間のボムボムプリンちゃんにするわ……アデュー……」
   * * *
そして、迎えた翌日。
どこかトボトボとした足取りで所沢駅前店の調剤室に入ると、元気いっぱいの声が飛んできた。
「あれー、どうしたんですか天音さん! なんか今日めちゃくちゃ元気ないですよ? あっ……そのバッグにつけてるの、ボムボムプリンじゃないですか! サンリュオ好きなんですね!!」
悪気ゼロのキラキラ笑顔で話しかけてくる橘くん。
くっ……橘くん、眩しすぎるよ……!
「うっ、うん……昨日、銀座で買ってきたんだ……好きでさ」
うぅ……昨日の今日で、推しのシナモンロールを買えずに妥協してプリンくんにした私の切ない事情なんて知るわけもなく、なんだか心にグサグサと突き刺さるようだわ……。
するとそこに、すっと影が差した。顔を上げると、神楽坂エリア長が立っていた。
「その……先日は店長セミナーの資料、非常によく出来ていた。……なのに、細かい在庫率のことで余計な注意をして悪かったな」
「えっ……?」
「……これ。よかったら、使ってくれ」
エリア長がスッと差し出したその手のひらの上に載っていたのは——なんと、昨日銀座のショップで彼が赤面しながら買っていた、あの『シナモンロールのペン』だった!
ぱぁぁ……っ!!
私の脳内で、一瞬にして世界が明るい花畑へと変わる。嬉しさと驚きで、私はニコニコの笑顔をどうしても抑えきれずにそれを受け取った。
「ありがとうございます♪ 神楽坂エリア長!! 大切に使いますね!」
「う、うむ……よかった……」
 耳まで真っ赤に染めながら、恥ずかしそうにそそくさと去っていく神楽坂エリア長の背中。
 ——尊すぎて、私の目眩は最高潮に達したのだった。
(薬師寺天音、本日も絶賛HPゼロでございます……!)