幼馴染だから、恋じゃない





は、るき……? 本当に、遥希なの……?




五年前の、酷く暑かった夏の日。


何の前触れもなく「親の仕事の都合で」と、今にも泣きそうな顔で私の手を握り、遠くの街へ引っ越していった、私の幼馴染。






あの頃は私より頭一つ分背が低くて、いつも膝に擦り傷を作っては、私の後ろを笑いながらついてきていたはずの彼。








「長谷川くんの席は……椎名さんの隣が空いてますね。椎名さん、手を挙げて下さい」








先生に名前を呼ばれ、私はびくりと肩を揺らした。




半分パニックになりながら、ロボットのようなぎこちない動きで右手を上げる。




先生が「長谷川くん、あそこです」と指をさした先は、私のすぐ右隣の空席だった。




クラス中の視線が、好奇心と共にこちらを向く。








けれど遥希はそんな視線は物ともせずに、ゆっくりと歩き出した。


一歩、一歩、彼がこちらへ近づくたびに、私の鼓動は早鐘を打つように激しくなり、視界が歪むような錯覚さえ覚えた。