幼馴染だから、恋じゃない





何気なく視線を前に向けたその瞬間、私の心臓が、ドクン、と痛いほど大きく跳ね上がった。




黒い、少し癖のある髪。


涼しげな目元と、すっと通った高い鼻筋。


大人びた、ネクタイを少し緩めたブレザーのシルエット。






女子の小さな歓声と、男子の品定めするような視線が教室中を埋め尽くしていく中、私はただ一人、その姿に釘付けになっていた。





「長谷川 遥希(はせがわ はるき)です。前の学校は東京の方でした。……よろしくお願いします」





低くて、少しハスキーな声。


ぶっきらぼうに見えて、どこか丁寧に言葉を選ぶその話し方。


それは、私の記憶の最も深い場所に、大切に仕舞い込まれていたあの男の子の声に、間違いなかった。