高校一年生の秋。
まだ慣れない机の感触。
お互いに手探りで会話をしているクラスメイトたちの、少し硬い声。
この落ち着かない空気が、私──椎名 美空はどうにも苦手だった。
「はい、全員席に着いて下さい。ホームルームを始めますよー」
廊下から響く、担任の先生の足音と声。
それを合図に、クラスのざわめきが収まっていく。
私はぼんやりと窓の外を眺めていた。
校庭の隅の紅葉はすでに散り始めていて、風が吹くたびに淡いオレンジ色の葉がアスファルトを滑っていく。
退屈で平穏な、何も起きないはずの新学期。
けれど、先生が教壇にノートを置いて放った一言が、静まり返った教室の空気を一変させた。

