水槽の中の私からの、あなたへの贈り物

カイは、ぶっきらぼうな男の子だった。
俺とは同年代で。背は高く。
隣に立つのを躊躇うぐらいのイケメンだが、どことなく気遣い上手で。
俺がコンビニに入ろうとしたら、いつだって、ドアを開けてくれるし。細い道では俺を先に進ませてくれる。
こいつ、絶対、モテるんだろうなぁって思った。
っていけないいけない。
感傷に浸ってる場合じゃない!
「……なに、俺の顔まじまじ見てんの?なんか面白い?」
少し苛立ち気味なカイにううんっと首を振る。
ここはカイの家。和室の、のどかな一軒家だ。
シジュウカラの鳴き声だって聞こえてくる。
ただ、一つ気になるのは。
「隣の女の子、誰ぇ!?」
その子は長い茶色い髪をふたつくくりにしていて。愛想が良さそうで。ニコニコしてて。
特別美人ってわけでもなさそうだが、なぜか目を引く女の子だった。
これでカリスマ性ってやつ?
「えっ、うち?」
女の子は驚いたように目を見開いて自分を指さす。
コクリと頷くと。
「うちは〜、ヒカリって言うの。かわいい名前でしょ?」
うーん、ありきたりすぎて。カワイイ名前なのかはわかんないけど。だけどオーラにぴったりだね。これ以上ないほど似合っているなぁ。
お世辞だけど、頷く。
「えへへっ☆うちとカイはね。同い年で。小5からの親友なのっ」
そうなんだ。つまり、俺は今、中2だから。この2人は3年ぐらい、親友なんだなあ。素敵だ。
俺は友達は大勢いたけど、親友と呼べる人はいなかった。
……俺は、仲良くはするけど、あんまり、心は開かないタイプだから。
あとはのんのことを気にしすぎて。周りが見えていなかったのもあるのかもしれない。
のんの気持ちも知って。改めて思い知らされる。
……俺は、大馬鹿者だってことを。
俺は周りを見てるつもりして。なんにも見えてない。
そして気持ちを伝えもしないし。逆に尋ねもしない。
そりゃのんのことも、見失っちゃうわけだ。
生まれてくる前は、初めて自分に妹ができたことが嬉しくて。お兄ちゃんになる自覚を持つぞって張り切って。図書館で。名前辞典を焦りまくって。どんな名前がいいかなあなんて常に考えていたというのに。
生まれえきた時も、のんのもとを離れようとしなかったし。かわいいかわいいのんて大歓喜していたのに。
いつからだろう。いつから、目を背けてしまったんだろう。いつから、嫉妬して。逃げ始めたんだろう。
わかってしまっても、俺がバカなことに変わりはないから。わかったってとくに意味はないんだけど。過去には戻れねぇし。
「本題に入るな」
突然カイの声が聞こえて。我に返る。
考え込んでいたのか俯いていて。急いで切り替えるように顔を上げるとバチッとカイと目が合った。その瞳にすべてを見透かされたような気分になって。気味が悪い。
「お前の妹分が死んだ。……平気か?」
妹分って実際妹なのに。
平気か?うーん、どうなんだろ?
少し悲しい気持ちもある。けど、のんはそんなこと望まないのはわかってるから。
「平気だよ」
ちゃんとあの瞳を見つめて言えた。
それだけで……すごく嬉しいっ。
「そうか。なぁ、さっきの妹分殺した怪異。……その怪異を倒す職に俺たちはついてるんだけど、お前も入らないか?」
……そんなもの、あるの?
でもすぐにそりゃそうかとも思った。
だって常識的に考えて。あんな怖いやつ、放っといたらやばいだろう。
「入る。いや入らせてください」
「なんで敬語なの〜」
ぷっとヒカリが噴き出した。
「うちらもう仲間よ?親友よ?よろしくね」
そっと差し出されたヒカリの手。
それはあったかかった。
初めてできた親友。初めてできた居場所。
俺は大馬鹿者で、幸せ者だね、のん。
見ててね。俺、そこそこ頑張ってみせるからっ!