こっちを、むいて。

7月25日。

毎年恒例川越夏祭りの日がやって来た。

小江戸を味わいたいからと全国各地から観光客が押し寄せる川越が一年で最もホットになる日かもしれない。

オレは夏休みだということも忘れたように毎朝4時起きしてほぼまる一日勉強しているのだが、今日は軽く参考書を見ただけであとは祭りの手伝いに赴く。

店舗も通常営業でそれプラス出店も出すから、二手に分かれ2時間交代制で販売を行う。

マニュアルもタイムスケジュールもオレが作った。

意外にもシゴデキ人間だった。

ま、こんくらい朝飯前って余裕見せとかないとメンツが立たないのだが。


「弥代くん、今日はお手伝いありがとう。弥代くん受験勉強大変そうだからあんまり無理させないでって颯太から頼まれてるから、本当にしんどかったら言ってね」

「お気遣いいただきありがとうございます、店長」

「て、店長?店長は悠花さんで…」

「この出店は2号店だから、こっちにも店長必要でしょ?いずれ自分の店持つんだから言われ慣れてないと」

「いやでも、さすがに店長は…」

「あ、店長、早速お客さん」

「えっ、あ!い、いらしゃいませ~」


保泉さん今日も相変わらずだ。

1年前とは比べ物にならないくらいたくましくなったみたいだけど、根っこは変わってなくて、

面白いいじりがいのある同級生のまんま。


「弥代くん、わたし作らなきゃだからお会計よろしくお願いします!」

「はいよ」


エプロン姿も板についてる。

怖気づいてオレに何も言い返せなかったあのころとは違う。

自信に満ちたキラキラした目で作業してる。

好きなことを見つけて、それをやり続けて

自信がついたんだろうな。

そのお手伝いとやらをオレも多少はしたみたいだけど、最終的には本人次第だってオレは思ってるから、

保泉さんのポテンシャルがもともと高かったからここまでになったんだろう。

この姿をオレが独り占めできるのは今日限り。

ますます魅力的になって、今だってオレの視線も心も奪って放さない保泉風花を

今この瞬間だけの奇跡と思って、目に焼き付けよう。

そう思いながら、オレは彼女の指示に従い、協力しながら人生初のお仕事をこなしていった。