「初日おつ!疲れたっしょ?」
「はい…。こんなに疲れたのにまだ先輩の半分もこなせていない気がします」
「でもよくできてたよ!声も出てたし、だんだんスキャンもうまくなってたし!さゆちゃむかわよいからさ、正直ちょっとやそっとのヘマでは怒られんよ!実際サラリーマンのおっちゃんたち、あたしがやってる時よりニヤニヤしてたし」
「えっ?そ、そんなことは…」
「ま、何はともあれ初日は無事完っ!ってことで、この後ちょっと時間ある?よかったら寄り道して帰ろ!」
と光莉先輩に誘われ、お店でご褒美アイスを購入して少し歩き、公園にやってきた。
ベンチにはわたしたちと同じJKや会社帰りのカップルもいる。
こんな時間でもまだ出歩いている人っているんだな。
早く帰らないと心配させちゃう、なんて変に焦って中学の頃も塾が終わったら速攻で帰ってたな。
別に誰も待ってないのに。
「さゆちゃむ、早く食べないと溶けちゃうよぉ」
「あっはい」
久しぶりに実家のことを思い出してたら、ぼーっとしちゃってた。
カップのアイスにしたから多少溶けても大丈夫だと思うけど、先輩が心配してくれてるんだからさっさと食べちゃわないと。
わたしは一体何年振りとも思えるアイスを口にした。
たしか小学生のころバレエのお稽古の帰りにこっそり買って食べたのが最後。
バレエ習ってるのにアイスを食べるなんてご法度だから、あの時のアイスは罪の味がした。
って思ってるけど小学生だったわたしにギルティなんて言葉はたぶんきっとわからない。
今だから分かるってやつだ。
はぁ…
それにしてもこのアイス
「美味しい…」
「うんうん。労働後のスイーツってサイコーだよね!このために生きてるって感じ!」
「このために?」
「あ、いや違うわ!あたしは推しとカレシのために生きてて…」
「推し?か、カレシ?!」
わたしの頭上に?マークばっかり浮かべていると、どこからか笑い声が聞こえてきた。
控えめだけど、すごく透き通った高い声がだんだんと大きくなる。
「光莉ちゃん、見っけ」
「お!風ちん!風ちんもバイト帰り?」
「そう。余った材料でまかない作ってきたからここで食べて帰ろうと思ったら光莉ちゃんのおっきな笑い声聞こえてきたんだ」
「んじゃ、3人でちょっとお話しよ!えっとね、さゆちゃむ、こちらは…」
視線を上げる。
公園の淡いオレンジ色の街灯に照らされ、一層淡く儚く見える。
「保泉風花です」
保泉風花、先輩…。
ふわっと穏やかで清楚なオーラが漂ってる。
ポニーテールが春の夜風に吹かれしなやかかつつややかに映る。
素敵な人、だな。
直感的にそう思った。
先輩方と話をしていたらあっという間に22時になってしまい、慌てて家に帰った。
「風ちゃん、お帰り。残業だったのかい?」
「ううん、違うよ。同じ高校の先輩とちょっと話してて遅くなっちゃったんだ。ごめんね。お夕飯作ってくれてありがとう。荷物おいてきたらすぐ食べるね」
「そうかい。おばあちゃんは眠たくなってきたから先に寝ちゃうけど、風ちゃんも今日は疲れただろうから早く寝るんだよ」
「うん、分かった」
おばあちゃんが寝室に向かい、わたしも用意された部屋へと向かう。
2階にある8畳の部屋。
もともとはおじいちゃんの書斎だった場所を今はわたしがお借りしている。
こっちに来て3か月。
まだ慣れないことばかりだけど、
昔を忘れるためには、
今いっぱい新しいことを吸収して
圧縮しなきゃ。
この胸でまだうずく
どす黒い靄が増幅して飲み込まれる前に
少しでも早く、
わたしがわたしを見つけてあげなきゃな。
鞄を所定の位置に置き、制服を脱いで部屋着に着替え、食堂へと向かった。
明かりがある。
食事がある。
それだけでまだだいぶあったかい。
今あるこの幸せを失わないように
わたしが自分の手で守らないと。
「いただきます」
手を合わせ、おばあちゃんが作ってくれたハンバーグ御膳を平らげたのだった。
「はい…。こんなに疲れたのにまだ先輩の半分もこなせていない気がします」
「でもよくできてたよ!声も出てたし、だんだんスキャンもうまくなってたし!さゆちゃむかわよいからさ、正直ちょっとやそっとのヘマでは怒られんよ!実際サラリーマンのおっちゃんたち、あたしがやってる時よりニヤニヤしてたし」
「えっ?そ、そんなことは…」
「ま、何はともあれ初日は無事完っ!ってことで、この後ちょっと時間ある?よかったら寄り道して帰ろ!」
と光莉先輩に誘われ、お店でご褒美アイスを購入して少し歩き、公園にやってきた。
ベンチにはわたしたちと同じJKや会社帰りのカップルもいる。
こんな時間でもまだ出歩いている人っているんだな。
早く帰らないと心配させちゃう、なんて変に焦って中学の頃も塾が終わったら速攻で帰ってたな。
別に誰も待ってないのに。
「さゆちゃむ、早く食べないと溶けちゃうよぉ」
「あっはい」
久しぶりに実家のことを思い出してたら、ぼーっとしちゃってた。
カップのアイスにしたから多少溶けても大丈夫だと思うけど、先輩が心配してくれてるんだからさっさと食べちゃわないと。
わたしは一体何年振りとも思えるアイスを口にした。
たしか小学生のころバレエのお稽古の帰りにこっそり買って食べたのが最後。
バレエ習ってるのにアイスを食べるなんてご法度だから、あの時のアイスは罪の味がした。
って思ってるけど小学生だったわたしにギルティなんて言葉はたぶんきっとわからない。
今だから分かるってやつだ。
はぁ…
それにしてもこのアイス
「美味しい…」
「うんうん。労働後のスイーツってサイコーだよね!このために生きてるって感じ!」
「このために?」
「あ、いや違うわ!あたしは推しとカレシのために生きてて…」
「推し?か、カレシ?!」
わたしの頭上に?マークばっかり浮かべていると、どこからか笑い声が聞こえてきた。
控えめだけど、すごく透き通った高い声がだんだんと大きくなる。
「光莉ちゃん、見っけ」
「お!風ちん!風ちんもバイト帰り?」
「そう。余った材料でまかない作ってきたからここで食べて帰ろうと思ったら光莉ちゃんのおっきな笑い声聞こえてきたんだ」
「んじゃ、3人でちょっとお話しよ!えっとね、さゆちゃむ、こちらは…」
視線を上げる。
公園の淡いオレンジ色の街灯に照らされ、一層淡く儚く見える。
「保泉風花です」
保泉風花、先輩…。
ふわっと穏やかで清楚なオーラが漂ってる。
ポニーテールが春の夜風に吹かれしなやかかつつややかに映る。
素敵な人、だな。
直感的にそう思った。
先輩方と話をしていたらあっという間に22時になってしまい、慌てて家に帰った。
「風ちゃん、お帰り。残業だったのかい?」
「ううん、違うよ。同じ高校の先輩とちょっと話してて遅くなっちゃったんだ。ごめんね。お夕飯作ってくれてありがとう。荷物おいてきたらすぐ食べるね」
「そうかい。おばあちゃんは眠たくなってきたから先に寝ちゃうけど、風ちゃんも今日は疲れただろうから早く寝るんだよ」
「うん、分かった」
おばあちゃんが寝室に向かい、わたしも用意された部屋へと向かう。
2階にある8畳の部屋。
もともとはおじいちゃんの書斎だった場所を今はわたしがお借りしている。
こっちに来て3か月。
まだ慣れないことばかりだけど、
昔を忘れるためには、
今いっぱい新しいことを吸収して
圧縮しなきゃ。
この胸でまだうずく
どす黒い靄が増幅して飲み込まれる前に
少しでも早く、
わたしがわたしを見つけてあげなきゃな。
鞄を所定の位置に置き、制服を脱いで部屋着に着替え、食堂へと向かった。
明かりがある。
食事がある。
それだけでまだだいぶあったかい。
今あるこの幸せを失わないように
わたしが自分の手で守らないと。
「いただきます」
手を合わせ、おばあちゃんが作ってくれたハンバーグ御膳を平らげたのだった。



